計画的俺様上司の機密事項
「……ただいま戻りました」


「どうした。げっそりしてるじゃないか」


シンちゃんがわたしの姿をみるなり、目を丸めた。

初対面というのにいきなり怒られたんだから、こんな凹んだ顔をしますよ。

もとはといえば、シンちゃんがとつっかかりそうになったけれど、ごくりと飲み込んで話を切り出した。


「あの先ほどの備品注文に対してですけど、数字が未記入だったのでこれからどれぐらい欲しいか聴きたいんですけど」


「下の人に聞いたらいいよ。電話してやるから」


といって、手際よく自分の机にある受話器で下の階へと連絡してくれた。


「備品について知りたいんだって、有沢が。うん、わかった」


受話器を置くと、にやっと企むような笑いを浮かべた。


「備品に関しては先輩が手厚く教えてくれるそうだ。あと助けてくれ、と伝言を渡瀬からもらった」


「……は、はい。ではいってきます」


自分の席に座ったのも束の間、今度は下の階へと走らされるなんて。

下の階に降りると入り口に真鍋先輩が待っていてくれた。


「有沢さん、備品について質問だって?」


「え、ええ」


「まずは有沢、こっちこっちー」


とわたしの顔を見るなり両手をバンザイさせながら渡瀬先輩が自分の机で待っている。


「あとでお願いします」


「おいしい紅茶もらったから三人で飲もう」


「はいっ!」


真鍋先輩のにこやかな優しい笑みをもらい、すぐさま渡瀬先輩のところへと急ぐ。


「有沢ー。ここのデータがどっかいっちゃってさ、いろいろかき混ぜてたらわけがわからなくなって」


「わかりました。今見つけます」


元データをひっぱってくれば早いのになあ、と思いながらデータの入ったCDをもらい、そこからデータをひっぱってきてデスクトップに保存してあげた。


「できましたよ、渡瀬先輩」


「ありがとう。やっぱりできる後輩を持つって最高だわ」


渡瀬先輩がもう少しデータをしっかり管理してくれたら後輩を使うことはないんですよ、と言いたかったけれど、笑ってごまかした。
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