計画的俺様上司の機密事項
4階に戻ると、すでにシンちゃんは自分の席について仕事をしていて、野上くんも黙々と作業に没頭している。

重すぎるこのどんよりとした空気についていけなかったれど、気にしないでわたしも自身の仕事を再開した。

定時を過ぎてからシンちゃんは帰っていった。

シンちゃんが帰った頃を見計らって、野上くんがわたしに声をかけた。


「有沢さん、一緒に帰らない?」


「ごめん。まだ残ってるから」


「そっか。わかった」


さっきまで野上くんは生き生きとしていたのに、急にしおらしくなりながら、机の上を片付けていた。

わたしは書きかけの記事を保存し、手をとめた。


「野上くん、土曜日に言ったこと、実現させたんだ」


「最終的にサーキュレーションメディアに載せるなら、まずは周知してる情報誌に情報載せたほうが筋かな、って思って。原稿責任者も喜んでくれたし、結城部長にも結果オーライならよかったんじゃないかな」


けろっとしているのか、わたしに笑顔までみせている。


「今回は丸く収まったけど、あんまり部長に迷惑かけるのもどうかと思うよ。野上くんらしくない」


「僕らしくない、か。ずいぶん結城部長の肩持つけど」


「気のせいよ。普通上司に相談して決めるじゃない。総務にいたとき、ちゃんと相談してやってたんでしょ?」


「そうだけど。新しい部署に入ったからには何かしらのアクションしていかないとね」


そういって野上くんはカバンに荷物を詰め込むと、お疲れ様と屈託のない笑顔をみせて帰っていった。

野上くんって、自信家だったのかなと首を傾げながら書きかけの記事を書き始めた。
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