計画的俺様上司の機密事項
「あのー、お楽しみのところ、恐縮なんだけど」
その男は寝癖をつけ、頭を掻きながら呼び止められた。
「誰だ」
部長はその男をみて、びくついている。
びくつく部長をその男はのんきに見ながら、大あくびをしていた。
「同じ会社の人間だけど、ていってもまだ知らねえよな」
「さ、さっさと職場に戻れ」
「は? この状況で何いってんの。それよりもさ、こんなところで昼間っから堂々とさ。夜まで待てねえのかよ。どんだけ性欲ギンギンなんだか」
その男は腕を組み、部長に詰め寄ってきた。
部長も背が高いはずなのに、その男の圧倒する姿に部長が小さくみえた。
「き、君……」
「指導する側がしっかりしないと。仕事はできないくせに、そういうことは一人前なんて。ダメな上司の代表って言われますよ」
といって、その男は胸ポケットからスマホを取り出し、手際よく操作する。
「あ、もしもし、常務ですか? 部長のことなんですけど、女性社員にセクハラしてるみたいですよー」
「お、おい。冗談だろ。常務に電話って。常務とどういう関係なんだ、君は」
「常務? こうやって連絡取れるってことはだいたい予想はつくよね?」
それを聞いて部長の顔は青ざめていた。
「や、やめたまえ。僕たちはれっきとしたおつきあいをしていてだな」
部長は目を吊り上げ、険しい表情をしながら、スマホを取り上げようとしていたので、男は器用にヒョイと体をかわしていた。
「公私混同も甚だしいっての。で、常務どうしたらいいんすかね?」
男はわざと聞こえるように大きな声で話をしている。
部長はわたしからようやく離れた。
「わ、わかったよ。有沢クン先にいっているからね」
「あ、部長」
そういって、部長はそそくさと逃げるように資料室から消えていった。