計画的俺様上司の機密事項
project5:部長の熱望、部下の願望。
ボリュームたっぷりだけど、ハーブとスパイスをきかせたチキンステーキや野菜をふんだんに使ったサーモンのカルパッチョ、オニオングラタンスープがテーブルに並べられる。


「明日は別メニューでいくから」


といって買ってきたシャンパンを開けた。


「大好きな夏穂に乾杯」


「わたしもシンちゃんのこと、大好きだよ」


カランとシャンパングラスをならし、口をつけた。

少しだけ大人の味がしたような気がした。


「クリスマスは苦手だった」


ぽつりとシンちゃんはローストビーフを食べながら、話を切り出した。


「小さい頃のあの日な、黙って夏穂の前から消える予定じゃなかった」


「えっ」


まだ残る料理たちを前にシンちゃんは目を伏せながら言った。


「母さんがさ、急いだんだよ。おやじのところへ行きたいって。クリスマスだろ。オレよりもおやじになる彼氏のところへ行きたかったんだ」


「……そうだったんだ」


「仕事が忙しいとかいいながら家を留守がちにしてた。おやじは家事ができないやつだったから当然オレがやらなきゃいけなくてな。結果、自立できたからよかったけど」


だからこんなに料理も家事もこなせる人になったんだ。

改めてシンちゃんの料理を味わう。

相当の苦労と想いがつまった過程で食材を美味しい料理へと導いていったんだ。
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