計画的俺様上司の機密事項
「今日は外で飯食おっか」


「えっ」


「毎日家事するのも疲れるんすよ、夏穂」


「ご、ごめん」


そうだよね。仕事で忙しいのに、家事を毎日してくれて。


「別に好きでやってることだからいいんだけど。こうやって外で思いっきり夏穂と一緒に歩きたかったんだ」


「シンちゃん」


駅方向を進み、路地裏に折れると、ひっそりとお店をかまえたカフェレストランの看板がぽおっと明かりを灯している。

北欧風のインテリアがひしめく中、入ってすぐレジの横にドールハウスが飾られていた。


「店長の知り合いの人がドールハウスを作る女の人と仲良しでつくってもらったんだってさ」


やわらかな店内の明かりに照らされたドールハウスはこの店をそのままミニチュア化したもので精密にできていた。


「ちょっと趣向を変えて来年は夏穂の好きなドールハウスとか、模型とか特集するのもいいかもしれないな。DIY特集とか。一人前になって支えてもらわないとな」


シンちゃんは一瞬、わたしから料理へと視線を移し、料理に目を落としていた。

もしかして、東京へ転勤になるんだろうか。

だからわたしのために、今日という日を演出してくれたのかもしれない。

周りは家族で来ていてにぎやかな笑い声やわたしたちみたいに二人だけでディナーを食べにきたサラリーマンとOLのカップルが仲睦まじく過ごしているのを横目に、覚悟を持って今夜を過ごそうと心に決めた。
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