計画的俺様上司の機密事項
「は!? 何いってんですか。遅刻しますって」


「減るもんじゃねえだろ。ほら、チュー」


シンちゃんがひょっとこみたいに口を尖らせてチューをせがんでいる変顔に呆れてシンちゃんの体の脇をすり抜ける。

少しぐらいチューぐらいしたっていいだろうが、ともみあいそうになったので、ドアを開けると、わたしもシンちゃんも一緒に外へ飛び出した。

すると、ちょうどお隣のおばさんに出会ってしまった。


「あら、夏穂ちゃん」


「おばさん、おはようございます」


どうしよう。

母がいた頃はそれなりに近所付き合いしていたから、特別何か言われることはないけど。


「いい旦那さんもらって幸せね」


「えっ」


驚きを隠せないでいると、シンちゃんが横でフォローしてきた。


「あはは、奥さん、まだ婚約者なんですけどね」


さっきのひょっとこはどこへいったのやら、きりっと凛々しい顔になり、隣のおばさんに低くいい声を発している。


「あら、いいじゃない。将来の旦那様ねえ」


「近い将来なんですけど、幸せにするつもりです」


そうシンちゃんは言いのける。


「あら、そう。まあ、夏穂ちゃん、おめでとう」


「え、あの」


「夏穂、恥ずかしいみたいで失礼します」


シンちゃんに口を押さえつけられながら、廊下を通り、エレベーターに乗り込んだ。
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