計画的俺様上司の機密事項
ガチャガチャとドアノブを乱暴にこじ開けようとしたり、ドンドンとドアをたたく音で目がさめる。


「あ、しまった」


ベッドから飛び起き、ボサボサで昨日の洋服のまま部屋を飛び出した。


「夏穂、そのまま寝たのか」


シンちゃんは心配そうな顔つきでこっちを見ているけれど、知らないふりをして台所へ向かい、水を飲んだ。

ダイニングテーブルからお味噌汁やら卵焼き、パンの焼けたいい匂いが立ち込める。

おなかがぎゅうっと鳴ったけれど、お構いなしにお風呂へと向かう。


「夏穂、どうしたんだよ」


風呂場の前の廊下にシンちゃんが腕を組んで立っている。


「別に」


「別にじゃないだろう」


シンちゃんに強い力でぐいっと腕を引っ張られた。


「今日も仕事でしょ。遅刻しちゃうから」


「……ああ、わかったよ」


ようやく手を離してくれて、お風呂場へと向かう。

もとはといえば、シンちゃんなんだからね。

どうして仕事の邪魔をするんだろう。

とブツブツ文句を言いながら、シャワーを浴びた。

お風呂から出て、あっ、と気づく。

そういえば、野上くんにお弁当を作っていくんだった。

早く起きてつくろうと思っていたのに……。

しかたない、野上くんに謝ろう。

シャワーを浴びてタオルを巻いたまま髪の毛をドライヤーで乾かしていた。

お風呂場の引き戸越しにシンちゃんが声をかける。


「おい、夏穂」


「ちょ、ちょっと何よ」


「何かあったか知らねえけど、飯食えよ」


「もう作らなくていいから」


「わかったよ」


威勢のいい声はどこかへいってしまったのか、というぐらいの弱々しい声でいうと、シンちゃんの足音が遠ざかっていった。
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