計画的俺様上司の機密事項
部屋に戻ると、机の上にはサンドイッチと飲み物、お弁当箱を出しそびれたから、黄色い手提げ袋に入ったお弁当が置かれていた。


「……シンちゃん」


いい香りが部屋じゅうに漂う。

反応しておなかが鳴ってしまった。

しぶしぶラップに包まれたサンドイッチを口にする。

中身はハンバーグだった。昨日、手作りでつくってくれたのだろう。

朝からボリューム満点だけれど、昨日から食べていなかったからおなかにすとんと入っていった。

ちゃっかりすべて平らげると、机に置かれた時計がそろそろ会社へ出発しなきゃいけない時間を知らせていた。


「遅刻しちゃう」


急いで着替えて部屋から出た。

居間の明かりが消されていて、シンちゃんの部屋から物音が聞こえない。

玄関の靴箱をみたら、シンちゃんの革靴が一足なくなっていた。


「先に行ったのか」


肩を落とす反面、別にシンちゃんと会社にいかないからって寂しくなんかないんだから、と自分に言い聞かせる。

カバンにはしっかり黄色い手提げ袋に入った弁当箱を持参しているくせに。

会社について、いつものように警備員さんにあいさつをしてからタイムカードをとってタイムレコーダーに差込もうとした。


「あれ。ない……」


昨日帰り、野上くんの段にタイムカードを差し込んだはずなのに。

もしかして他の人が間違えて別のところへやったのかな、と探したけれど、やっぱり見つからない。

警備員さんにも聞いてみたけれど、知らないといっただけだし、このままじゃあ、遅刻扱いになってしまう。

しぶしぶタイムレコーダーが載った棚の引き出しから新しいカードを取り出し、差し込んで野上くんの下に差し入れた。
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