計画的俺様上司の機密事項
お昼休みになってシンちゃんはふらりと外へ出かけてしまった。

シンちゃんがいなくなったところを見計らい、黄色い手提げ袋を机に出した。

野上くんが黙ってじっと机の上のものをみている。

そうだよね、今日、作ってくるって宣言しちゃったものね。


「野上くん……あのね、お弁当、作ってこれなくって。自分のだけになっちゃって」


「そうだと思ったよ。いいよ。いつでも」


二段式の緑色のお弁当箱をあけると、きれいに盛られた唐揚げや煮物や焼き魚、卵焼き、玄米がびっしり詰まっていた。


「じゃあ、その唐揚げ、1つちょうだい」


野上くんがリクエストしてきた。


「うん、いいけど」


これを作ったのはシンちゃんなんだけどなあ、と思いながら、蓋の上に唐揚げを乗せて野上くんに渡した。


「おいしい。下味がしっかりついてる。さすが有沢さんだね」


満面の笑みを浮かべながら美味しそうに頬張る野上くんに後ろ髪を引かれる思いだ。

コンビニ行ってくるね、と嬉しそうに野上くんは行ってしまった。

机に広がるお弁当箱をみて、一人、ため息をつく。

いらないといいながら、ちゃっかり食べているわたしもわたしだ。

でもつくってくれたし、腐らしたらもったいないからしかたなく食べてやってるんだ、という変な意地とともに残さずしっかり食べた。
< 99 / 252 >

この作品をシェア

pagetop