浅い眠り

   スパイスの香りが僕のエプロンに

      染み付いて離れない。


        
  今日の昼食のメニューはカレーライス。


   週に一度は必ず作る僕の得意料理で

       幼馴染の大好物。


     日曜日の今日はその幼馴染が

     やって来るはずなんだけど

          ・
          ・
          ・


      約束の時間になっても

    幼馴染が訪ねてくる気配はない。


    僕は手も濡れたままスリッパで

      裏口から飛び出した。


   だが裏口のドアノブを握った手は

      中途半端に止まった。


     彼女は庭のハンモックで

      寝息を立てていたのだ。


  僕はほっと胸をなでおろすと同時に

   段差で宙に浮いていた足が落ちて

       地面に転がった。


    こんなに庭が芝生でよかった

     と思ったのは初めてだ。


     芝生のおかげで幼馴染も 

     まだ穏やかな顔をしている。


   立ち上がって幼馴染の方へ行くと

     いつもかけている眼鏡と

     読んでいたのであろう本が

      手元に投げられていた。


   ノースリーブの白いワンピースは

   幼馴染の綺麗な肌をより惹き立てる。



       「風引いちゃうよ」



    たとえ夏でも日陰はよくない。


       僕が一言かけると

     幼馴染は寝返りを打った。


 落ちてしまうのではないかと身構えたが

      そんな心配は必要なく

      綺麗に寝返りをした。


         その時

     空の方から何かが舞った。


         ✾.
         *。✧
         「蝶だ」

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