Addictive Gummi

 投げやりな表情で言うと、手を合わせ

「とりあえず食べながら話そうか。いただきます。あー、昨日からカップラーメンしか食べてないから、すっごいご馳走」

 ランチにお箸をつけたゆうひ工場長を、まじまじと見た。

 家出してネカフェ難民してるって本当なんだろうか?
 社長のご自宅――お菓子御殿と呼ばれる大豪邸に、家族揃って住んでいることは有名だ。


「よっぽど駄目なこと、したんですか?」

 異例の辞令が発表されて、そういう憶測が飛び交っている。
 社長の息子なのに更迭されるなんて、よほどのことだ。

 解雇じゃなく左遷というのが、また微妙。

「ちょっとね……価値観の違いってやつ? 俺は自分が正しいと思ってるよ。でも正しいことが正しいとは限らないって……俺はまだ納得してない。だから家出して、反抗してる。浅沼さんは、僕の側についてくれるよね? 婚約してるんだし」

 家出して反抗してるって……青春真っ盛りの高校生じゃあるまいし。
 クールな大人だと思っていたゆうひ工場長のイメージが、がらりと変わる。


「それとも、もう婚約解消する? 浅沼さんが気に入ってた僕のランク、早々と下がっちゃったし。来週から工場行くから、こうして社員食堂でランチできるのも、最初で最後かもね」


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