Addictive Gummi


「そう? 大損しなかっただけ、良かったんじゃない?」


 割り込んできた声の主を見て、驚いた。

 さっきの男の人だ。まだ残っているとは思わなかった。

 女性二人もびっくりした顔をしている。
 二人を見て、男性がにこりと微笑んだ。


「だってこのスーツ、幾らすると思ってるの? 赤ワインの染みが着いたら、弁償してもらうしかないけど。君、五十万、払える?」

 仰天した。ご、五十万のスーツ!?

 確かにいい生地そうで、高級そうだ。メンズスーツに詳しくないから分からないけど、きっと有名なイタリアンブランドとかなんだろう。
 でもスーツに着られている感じはしない。しっくり似合っている。


「新調してくれるなら別にいいよ。ワインをわざとかけられても」

 綺麗な笑顔で追い込みをかける男の人に、顔色を失う女性二人。

「彼女にお礼、言ったら? 馬鹿な真似をするのを未然に防いでくれて、ありがとうございましたって。それと、謝りな」



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