Addictive Gummi
「……すみませんでした」
「すみませんでした。ありがとうございました」
女性たちが頭を下げた。
ばつが悪そうにして、エレベーターにそそくさと乗り込んでいなくなった。
「あ……の、ありがとうございました」
向き直って御礼を言うと、彼は苦笑した。
「お礼を言うのは俺のほうだよ。スーツ、守ってくれてありがとう。それに、そのせいで変な因縁つけられちゃって、とんだ災難だったね。ごめん」
「あ、いえいえいえっ。仕事してたら、変なお客さんって一定数いますし。大丈夫です。助けてくれてありがとうございました」
「ワインかかった服って、駄目になったんじゃない? 制服? 買取?」
「ブラウスは自前です。制服には少しかかっただけですし、クリーニング出したら大丈夫そうです」
「そっか。じゃあ、俺が弁償するよ」
「えっ、いえいえ、そんなっ大丈夫です。五十万もするスーツじゃないですし」
慌ててお断りすると、くすりと笑われた。
「ああ、あれ嘘だよ。これ、七万円。しがないサラリーマンが、五十万のスーツ着てないよ」