Addictive Gummi
「どうかした?」
「あの、バーじゃなくて……部屋ですか」
「ああ、うん。ここのホテル、最上階はバーじゃなくて客室なんだよね。部屋の中にバーがあるから、大丈夫だよ」
にこりと笑うあさひ部長に、約束が違うから帰りますとは言えなかった。
なぜならあさひ部長は一言も、バーで飲もうとは言っていない。
上でも飲もうと言われて、私が勝手にラウンジバーだと解釈しただけだ。
「あ、俺のこと警戒してる?」
「いえ、そういうわけじゃ……」
迷ったけれど、一か八かの気持ちもあった。
楽しくお酒を飲むだけかもしれないし、酔った流れで男女の関係になるかもしれない。
どっちにしろ、自分があさひ部長に惹かれていることは明確だった。
部屋に入って、そのきらびやかな雰囲気にも酔ってしまった。
ホテルというより、まるで家だった。大きなテレビとソファーセットが置かれたダイニングリビングがあって、キッチンがあり、カウンターテーブルがある。
寝室は奥にあるらしく、ベッドは視界に入ってこない。
ここがホテルだということを忘れそうになるほど、ゆったりとした空間で甘いカクテルを何杯も飲んだ。