Addictive Gummi
きびすを返して、濡れたアスファルトを駆けて帰った。
ちょうど通り雨が過ぎ去って、傘ももう必要ない。
親切心を出して、傘を届けに来たのがアホみたいだ。
お弁当だってわざわざ早起きして作ったのに。
お仕事ご苦労様ですと、少なからず感謝の意を表したのに。
これって馬鹿にしてる。私のことも、高島さんのことも。
契約婚約の私はともかく、高島さんは会社を辞めてしまうほど重症な恋に落ちているのに。
「なんで責任取らないんですか?」
帰宅したゆうひ工場長に、真剣に詰め寄った。
「え?」
ネクタイを外す手を止め、ゆうひ工場長はきょとんとした顔をした。
「何の? ああ……結婚? 早くしたいの?」
「私じゃなくて。高島さんと結婚すべきなんじゃないですか? 責任取って」
ゆうひ工場長の顔つきが変わった。険しく眉間を寄せた。
「彼女のこと誰から聞いた? 旭日? 杉山さん?」
杉山さんって、杉山部長代理?
ゆうひ工場長がいた商品開発部で、前に部長をしていた人だ。
今は経営戦略部で、部長代理をしている。
その二人は知っているってことか。ゆうひ工場長と高島さんとの関係を。