Addictive Gummi


“バレるところで火遊びするなよ”

 あさひ部長の言葉を思い出す。

 私とキスしていたゆうひ工場長への忠告。
 ゆうひ工場長には高島さんがいると知っていたからだ。

 そのあさひ部長にゆうひ工場長は、私とは真剣に付き合っているとその場しのぎの宣言をした。

 じゃあ高島さんはどうなるの?


「酷いです、ゆうひ工場長。女心を弄んで。婚約、解消してください。幸い、私とはごっこ遊び止まりですし、失ったものもありませんから。高島さんへの責任、ちゃんと取ってあげてください」

 ゆうひ工場長とは、あの初めての、交通事故に遭ったようなキスをしたっきり、何もしていない。

 一つ屋根の下で暮らしていても、飄々としていて憎らしいくらい余裕のあるゆうひ工場長に、襲われることもなかった。
 新婚ごっこがむず痒かったし、遅かれ早かれ終わりが来るゲームだったのだ。

 男としてのゆうひ工場長が、こんなに不誠実だとは思わなかった。
 会社で普通に過ごしていたら、決して見えなかった面だ。


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