Addictive Gummi


「ちょっと待って。何か勘違いしてるようだけど、彼女とはそういうんじゃ……」

「言い逃れしないでください。この目でしっかりと見ましたから。ゆうひ工場長と高島さんが、ホテルへ入るところ」

「……えっ、もしかして朝、後をつけて来たの?」

 そう言われると、ストーカーのようでばつが悪いけれど。

「傘を渡そうと思って、です。ゆうひ工場長が出た後、急に雨が降ってきたから」

「ああそっか、わざわざどうもありがとう」

 いつもの穏やかな微笑でお礼を言われて、少し面食らう。

 駄目だ、この笑顔にほだされては駄目だ。


「で、見ましたから。言い逃れできませんよ。仕事行くふりしてうちを出て、辞めた社員と落ち合ってホテルへ直行って、どういう神経してるんですか」

 全然反省していない表情のゆうひ工場長が、まじまじと私を見つめた。

「ちょっとは妬いた?」

 思わず絶句した。

 妬いた? 

 はらわたは煮えくり返ってる。けど、ヤキモチじゃない。

「ごめん、そんな怒んないで。高島さんとは本当にそういう関係じゃないんだ。ホテルでは、彼女の……症状をチェックしてる。彼女が調子を崩して会社を辞めたことは……申し訳ないと思ってるけど」


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