Addictive Gummi
「勇日がお世話になっているらしいね」
がちがちに緊張しながら訪れた社長室で、初めて直接会話をする社長が言った。
「はい、いえ、えっ」
「あいつももう三十になるからね。家を出て、好きな女性と暮らしたいと思っても、変じゃないよなあ。しかしねえ、あいつには自由に相手を選んでもらっちゃ困るんだ。すでに私のほうで決めている相手がいるからね」
「えっ」
驚いた。そんな相手がいるとは全然聞いていない。
「相手は大手小売業の会長のお孫さんだ。まだ大学生でね。イギリスの大学に在学中だ。彼女がイギリスにいる間は、女遊びもほどほどにすればいいと、勇日にも言ってあった。しかし、あいつは女に大して興味がないようで、浮いた話は今まで全く耳に入らなくてね。降って湧いたような君の話を聞いて、驚いてる」
そりゃ驚くだろう。
まさに降って湧いた出来事だったのだ。
「勇日の結婚には、我が社の将来がかかっている。大人しく身を引いてくれるね? 相手の女性は、来年には帰国する。それまでには身辺整理をさせるつもりだ」