Addictive Gummi


 一方的に喋って、社長はデスクの上に置いている封筒をすっと私のほうへ出した。

「これは、ほんの気持ちだ。受け取ってくれたまえ」

 これは雰囲気的に、手切れ金?

 お金持ちって本当にどうしてこうなんだろう。


「せっかくですが……これは必要ありません」

 断り文句を述べると、社長の眉がぴくりと動いた。

「ゆうひ工場長とは、もうお別れしました。精算も十分にしていただきましたので」

 私の言葉に、ほっと安堵の色を浮かべる社長に、続けて言った。

「ゆうひ工場長は、私よりも、高島早苗さんとの関係を清算すべきだと思います。ホテルで定期的に会っているみたいですね。高島さんのこと、ご存知ですか? 広報課にいた」

 高島さんの名前を出すと、社長の顔色が変わった。

「……いや、そうか。あいつも私の知らない間に、ずいぶん隅に置けない男になったものだな。その、高島早苗とかいう元社員のことは、勇日から何か聞いているのかね」

「自分のせいで彼女が会社を辞めてしまったから、責任を取りたいと仰ってました。だから私は泣く泣く身を引いたんです。なのに、正式な婚約者が他にいらっしゃるなんて、酷いです」


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