Addictive Gummi


「高島早苗に会えないようにね」

 私をじっと見据えるあさひ部長に、ごくりと唾を飲んだ。口の中が乾燥してくる。

「勇日と連絡が取れなくなったからか、俺の携帯にかかってきたよ。厚かましい女だよ、まったく」

 ゆうひ工場長と連絡が取れなくなったからといって、どうしてあさひ部長に電話が?


“彼女が求めるものを与えられるのは、僕じゃない。旭日だ”

 ゆうひ工場長の言葉を思い出し、はっとした。

「……それで、高島さんが求めるものを、あさひ部長が代わりに?」

 かまをかけると、あさひ部長の漆黒の瞳が一瞬曇った。

「いいや、あれはもう作ってない。勇日が勝手にしていたことだ。そもそもこっちが責任を感じることじゃない。横領を働いた彼女を自主退職扱いにして、退職金も支払ったんだから。十分だろ」

 高島さんが、横領?

 物騒な言葉が飛び出してきてびっくりしたけれど、ポーカーフェイスを保って、「そうですか」と答えた。

 
「ところで君……勇日のことはもういいの?」

「え?」

「復縁したいなら、手を貸してもいいよ」


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