Addictive Gummi


 あさひ部長の申し出に目を丸くした。

「ゆうひ工場長には、決まったお相手がいると社長からお伺いしました。彼女が帰国するまでに身辺整理をさせたいと仰っていました」

 なのに、私との復縁に手を貸すという、あさひ部長のお腹の中が読めない。

「だから? じゃあ仕方ないって、あっさり諦めるの? 同棲までしてた二人が?」

 まるで責められているようだ。
 どうして私が悪いみたいに言われなくちゃいけないんだろう。


「仕方ないじゃないですか」

「そう? 俺も勝手に決められた相手はいるけど、そんなもの律儀に守るつもりはないし。親の承諾がないと入籍できないっていう法律があるわけじゃなし。婚姻届、出したもん勝ちだと思うけど?」

 にやりと笑って、あさひ部長は上着のポケットから紙切れを出した。

 机の上に広げられたそれに、目が点になった。

「はい、婚姻届。勇日の署名と捺印は済んでるから、後は君次第だよ」

「……これ、本当にゆうひ工場長が書いたんですか?」

 違和感しか湧かない。

 味方になると約束出来なかった私を見限って、ゆうひ工場長はアパートを出て行ったというのに。


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