Addictive Gummi


 カフェを出てあさひ部長と別れ、駅に向かって歩き出したところで、後ろから声をかけられた。


「浅沼さん」

 えっと思って振り向くと、立っていたのは高島さんだった。

 ついさっきまで話題にしていた高島さんが、不意に現れてびっくりした。

 偶然にしてはタイミングが良すぎる。
 もしかしてカフェにいたときから見張られていたんだろうか。


「お久しぶり。元気してた?」

 動揺を隠して明るく応じた。

 薄手のワンピース一枚の高島さんは、寒そうだ。日が落ちると肌寒く感じる時期だ。
 青白い顔色で、高島さんはよたよたと近寄ってきた。

「浅沼さん、ゆうひ部長と付き合ってるんですよね? だから、あさひ部長ともプライベートで会えるんですよね。浅沼さんから頼んでくれませんか。あれがないと私、禁断症状が」

 腕を掴まれてぎょっとした。

 前より随分痩せたと分かる、骨ばった手。
 弱々しい力なのに、目だけがらんらんとした光を宿している。禁断症状という非日常な単語に、どきりとした。

「な、何のこと」

「意地悪しないでください。ゆうひ部長との仲を疑ってるんですね? 私はあれさえもらえればいいんです。ゆうひ部長じゃなくても、あさひ部長でも、杉山部長でも」


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