Addictive Gummi

 唖然とした。

 この人、めっちゃ嘘つきだ。
 どうしても本当のことは話せないらしい。


「……それは……マニアックなご趣味ですね」

 カードに入っていた画像は、おじさんだった。無修正だけどポルノではなかった。白衣を着ていた。
 今より若いときの社長も一緒に写っていた。
 じっくりと見てはいないけれど、手書きのメモを撮影したものや、商品の画像などもあった。

 勝手に見て悪いとは思ったけれど、唾液まみれのカードをウェットティッシュで拭いてから乾かしたあと、データが駄目になっていないかどうか心配で、さっとチェックしてきた。

 どうしよう。見た内容を問い詰めたところで、上手くかわされて終わりだろう。


「分かりました、黙ってカードはお返しします。でもさっき部長が仰った条件、つけてくださいますか?」

「条件……?」

「口封じのために、私と結婚してくださるって言いましたよね?」


 ただの社員では踏み込めない領域なら、『婚約者』になればいいんじゃないか?

 そう思った。

 怪しいゆうひ部長の動向を探って、何かを掴めば、あさひ部長に告げ口できる。

 
 
< 8 / 48 >

この作品をシェア

pagetop