オフィスのくすり
 出てきた和泉は何故か、井上を睨んでいる。

 井上はそれに気づかずFAXを見ていた。

 顔を上げたのは、ただ単にFAXの受信音を聞いたからのようだった。

 そのついで、と言った感じで、和泉に話しかける。

「おお、和泉。
 これ、どう思う?」

 井上は和泉の視線のキツさなど眼中にないようだった。

「来た来た」
と浮き浮きした様子で、FAXを手に取っている。

 その様子を横目に見ながら、和泉に訊いた。

「……あんた、なんで睨んでんの?」

「だって、この人ーー」
と言ったまま、和泉は言葉を止める。

 しゃきっと話せ、とどつきたくなったが、
「見ろ」
という井上の声がそれを遮った。

「また巨大化してる。
 顔が半分しか写らなくなったぞ」

「はいはい」
と相槌を打った腕を和泉が引く。

 なに? と振り向くと、
「なんで、井上さんと居るんですか?」
と小声で訊いてきた。

「なんでって……さっき急に現れたのよ」

「約束してたわけじゃなくて?」
と和泉は言う。
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