オフィスのくすり
「なんで私がこいつと約束しなくちゃいけないのよ」
彼は上目遣いに井上を見上げながら、
「だって、僕、この人に威嚇されたことあるんです。
花見のときに」
そう小声で言ったが、聞いていないかと思った井上が、
「威嚇じゃなくて、牽制」
とこちらを見ないまま言い換える。
「牽制? なにを?」
「花見のとき、お前が何か挨拶してて。
それをこいつがポケッと見惚れてたから、ちょっと」
「……なんて?」
「いや、悪い女に引っかからないように言っただけ。
効果なかったみたいだけど」
と井上は笑う。
そして、余計な言葉を付け加えた。
「こいつが気になって、旦那と別居状態なんだろ?
なんで、距離を置いてる?」
ええっ? という顔で和泉はこちらを見た。
余計なことを、と思いながら答える。
「……気になるというか。
和泉くんが示してくれたみたいな情熱を、あの人からは感じないなと思ったの」
「旦那は冷静なだけだろうが。
こいつは若いから無謀なだけ。
このFAXの女と一緒じゃないのか?」
その言葉に二人同時に、えっ? と彼の手元のものを見る。
彼は上目遣いに井上を見上げながら、
「だって、僕、この人に威嚇されたことあるんです。
花見のときに」
そう小声で言ったが、聞いていないかと思った井上が、
「威嚇じゃなくて、牽制」
とこちらを見ないまま言い換える。
「牽制? なにを?」
「花見のとき、お前が何か挨拶してて。
それをこいつがポケッと見惚れてたから、ちょっと」
「……なんて?」
「いや、悪い女に引っかからないように言っただけ。
効果なかったみたいだけど」
と井上は笑う。
そして、余計な言葉を付け加えた。
「こいつが気になって、旦那と別居状態なんだろ?
なんで、距離を置いてる?」
ええっ? という顔で和泉はこちらを見た。
余計なことを、と思いながら答える。
「……気になるというか。
和泉くんが示してくれたみたいな情熱を、あの人からは感じないなと思ったの」
「旦那は冷静なだけだろうが。
こいつは若いから無謀なだけ。
このFAXの女と一緒じゃないのか?」
その言葉に二人同時に、えっ? と彼の手元のものを見る。