オフィスのくすり
未来への帰り道
「終わりました。
どうもお疲れ様ー」
オフィスの隅のソファに三人は腰を下ろし、ビールの缶をぶつける。
私はひとりで、井上と和泉が、何故か並んで座っていた。
あのあと、私一人に任せて悪いと思ったらしい部長が差し入れをさげて戻ってきたので、慌てて例のFAXを隠し、一度、それぞれの仕事に戻ったのだ。
私の仕事が一番手間がかかったのだが、それもなんとか終わった。
「仕事しながら、ずっと考えてたんだけど」
近くのコンビニで和泉が買ってきてくれたビールに口をつけながら言うと、テーブルに広げてある部長の差し入れをつまみながら、井上が言う。
「よそ事考えながら仕事すんなよ……」
「目と手はちゃんと動いてたから大丈夫。
単純作業も多かったし。
で、あのFAXだけど。
もしかして、よくある都市伝説みたいなのかなって思ったんだけど」
「都市伝説?」
と和泉が訊く。
「ほら。
電話の、あるじゃない。
今どこそこに居るとかって電話がかかってきて。
それが段々近づいてくるの。
あれのFAX版かなって思ったんだけど。
FAXに映ってる女の人がどんどん近づいてきて、最後には背後に立っているーー」
「ま、たぶん、その予定だったんじゃないか?」
唐揚げをつまみながら、井上が言う。