オフィスのくすり
「そうか。
そうかもね。
それにしても、どうして、間違いFAXがうちに届いたのかしらね」
和泉の手にあったFAXを手に取り、蛍光灯に翳すようにして眺める。
そこには普段は可愛らしい顔をしているのだろう女の、凄まじい形相が映っていた。
「ま、それも追求しないでおいてやったらどうだ?
間違って此処に届いた理由を調べると、本人に行き着きそうな気もするしな」
そんな井上の言葉に、うん……と答える。
和泉が私の手から、FAXを取り上げた。
「捨ててきます」
と宣言するように言い、部屋の隅のシュレッダーへと行ってしまう。
それを見送っていると、井上が笑って言った。
「厭なんだろ?」
「え?」
「あれを見てるのが。
自分の顔を見てるみたいで。
たぶん、和泉は、今の女の顔の上に、お前を撥ね殺そうとしたときの自分の顔を見てたんだ。
ま、ほんとに撥ねようとしたわけじゃなくて。
何かを切っ掛けに振り向いて欲しかっただけだろうけどな。
和泉を訴えなかったのは、お前も和泉を好きだからか?
それとも、ただ、哀れになったからか?」
シュレッダーにFAXを葬っている和泉の背を見ながら呟くように言った。
そうかもね。
それにしても、どうして、間違いFAXがうちに届いたのかしらね」
和泉の手にあったFAXを手に取り、蛍光灯に翳すようにして眺める。
そこには普段は可愛らしい顔をしているのだろう女の、凄まじい形相が映っていた。
「ま、それも追求しないでおいてやったらどうだ?
間違って此処に届いた理由を調べると、本人に行き着きそうな気もするしな」
そんな井上の言葉に、うん……と答える。
和泉が私の手から、FAXを取り上げた。
「捨ててきます」
と宣言するように言い、部屋の隅のシュレッダーへと行ってしまう。
それを見送っていると、井上が笑って言った。
「厭なんだろ?」
「え?」
「あれを見てるのが。
自分の顔を見てるみたいで。
たぶん、和泉は、今の女の顔の上に、お前を撥ね殺そうとしたときの自分の顔を見てたんだ。
ま、ほんとに撥ねようとしたわけじゃなくて。
何かを切っ掛けに振り向いて欲しかっただけだろうけどな。
和泉を訴えなかったのは、お前も和泉を好きだからか?
それとも、ただ、哀れになったからか?」
シュレッダーにFAXを葬っている和泉の背を見ながら呟くように言った。