オフィスのくすり
「報われなかった恋でも、ちっとはいいことあるだろ?

 お前はまだ旦那と別れてない。
 もうちょっと頑張ってみたらどうだ」

「好きだったなんて言うから、口説いてくれるのかと思ったら、それ?」
と笑ってやると、

「もちろん、そちらがお望みなら、俺は全然構わないが。

 家もないから、近くのホテルに泊まってるし。

 ところで、あれは何やってんだ?」
とビールの缶を持ったまま、和泉を指差す。

 几帳面な彼は、シュレッダーに残ったFAXの残骸までも始末してあげようとしたらしく、一度、側にある大型のゴミ箱にゴミを移し。

 更にそれでは、FAXの切れ端が見えると思ったのか、今度はゴミ袋を持ってきて、それに移し替えていた。

「あいつ、仕事で要領悪いだろ……」

 はは、と笑い、
「でも、真面目で可愛いとこもあるのよ」
と付け加えた。

 それに癒された日々もあったのだと今、改めて思う。
 
 
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