彼が嘘をついた
時間は約束の5分前。
モニターで確認すると、やっぱり隼人くん。

「お待たせしました!」
急いでスニーカーを履いて鍵を開けた。

「おぉ!まだ時間あるから、そんなに急がなくても大丈夫だよ。
まずは、ランチの場所を決めよう。何か食べたいものある?」

「えっと…、何でもいいよ」

「そっか。
じゃあ、ファミレスでいいか。行こう!」

彼はそう決めると、私の手を繋いで歩き出した。
その何気ない行動でも、"私たち、本当に付き合いはじめたんだ"と感じて、急に恥ずかしくなる。
それでも、そのまま彼について行った。

「いらっしゃいませ!
2名様ですか!?
禁煙席と喫煙席、どちらがよろしいですか!?
それでは、お席にご案内いたします」

ファミレスの扉を開けた途端、待ち構えていた店員さんに矢継ぎ早に声をかけられ、席へと案内される。
8月の容赦ない陽射しから冷房の効いた店内に入ると、その温度差に体が震えた。

「いつも思うけど、こういう店って、店内を冷やしすぎだよな。
ほどほどって、分からないのかな?
こんな急激に冷やされてちゃ、体を壊しちゃうよな!」

メニューを広げながら彼が言う。

「うん、そうだね」

私は頷いた。

「さて、と…。
今日の夕食、何を作ってくれるの?」

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