彼が嘘をついた
「おはようございます」

「おはよう」

「おはよう遥。
五十嵐くん、絶好調みたいだね!」

挨拶をすると、美鈴先輩にそんなふうに言われて、すぐにコートを見る。
…彼が綺麗にレイアップを決めていた。

「やっぱり彼女がお弁当作って応援に来てくれるとなれば、頑張ってカッコイイとこを見せたいもんね」
いきなり冷やかされる。

そんな話をしていると、私が来たのに気づいた隼人くんが、私を見つけて合図をしてきた。
私もそれに応える。

そんな隼人くんの様子に、チームメイトも私の姿を確認すると、彼の周りに集まって冷やかしはじめた。

私はすぐに、隠れるように席についた。

「五十嵐くんもからかわれてるね」

「ホント!
あれ…っ?そういえば今日、真由子ちゃんは?」

「えっ?真由子は、対戦相手の友達と来るって言ってたよ」

「そうなんだ…」

「あっ、あそこにいるのが高野さんじゃない?」

先輩が指さす方を見ると、確かに真由子が友達らしい女の子と一緒にいた。
2人とも、ある意味目立っている。
いくら熱気溢れる体育館と言え、ミニスカでいたのは彼女たちだけだから…。

「……目立つね」

楓恋がポツンと言うと同時に、『3分前です』との声がコートから聞こえた。
選手たちがアップをやめてベンチへと戻る。
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