彼が嘘をついた
「あー。
確か本部に、予備の割り箸があるはずですから、ご自分で借りに行ってみてください」

半分呆れながら、兄がそう教えてる。

「え~っ?
ここにはもう、予備の箸ないの?
準備悪いんじゃない?」

自分では何も準備していないのに、好き勝手言っている佐倉さんに、真由子以外のみんなが眉をしかめている。

「…佐倉さん。
ここで、この弁当を食べたいんだったら、黙って箸を借りに行ってください。
イヤなら…、あなたの口に合うレストランにでも行けばいい…。
…真由子も。
無理にここで食べなくてもいいだろう?
楽しい雰囲気、壊しにきたのか?」

隼人くんの冷たい言葉に、全員がハッとして彼を見る。

「……………」
「……………」
「……………」

……佐倉さんが立ち上げろうとした気配を感じたが、それを真由子が止めた。

「…いいよ、美幸。
私が箸を借りてくるから、美幸はおにぎりやサンドイッチみたいな、箸がなくても食べられるものを食べてて…」

真由子はそう言うと、本部へと急ぐ。
それを見ると、真由子にとって佐倉さんは、本当に大切な友達なのだろう…。

私は隼人くんを通じて、余っていたおしぼりを佐倉さんに渡した。

彼女はそれで手を拭くと、「いただきます」と手を合わせ、おにぎりに手を伸ばした。


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