彼が嘘をついた
ホッ…とした空気が私たちを包む。
隣の隼人くんも安心したように、おにぎりを食べている佐倉さんに声をかけた。

「佐倉さん、さ…。
佐倉食品の社長令嬢なんだから、もっとそれらしい振る舞いや行動をとらなきゃ、あなた自身やお父さんの品格が疑われるよ。
…いつまでも、わがままで自分勝手な振る舞いはやめた方がいいよ」
言い方はキツいが、隼人くんのその声はすごく優しい。

思わず隣を見た。
やっぱり…。
声と同じ優しい目で、佐倉さんを見ていた。
佐倉さんも、隼人くんを見つめている。

そんな2人を見て、胸がギュウッと掴まれたように痛くなる。

「…そうだね。
隼人の言う通りだよね」

佐倉さんは、隼人くんの意見に納得すると、隼人くんから視線を外し、食べかけのおにぎりを置いて姿勢を正すと、私たちを見回した。
そして、
「突然きて、快く仲間に入れていただいた上、お弁当も分けていただいたのに、ふて腐れた態度をとってしまい、皆さんにイヤな思いをさせてしまって申し訳ありませんでした」

そう言って、深々と頭を下げた。
その潔い態度に、やはり育つの良さを感じる。

「…いいですよ。
もう、顔を上げてください。
佐倉食品の社長令嬢とは知らず、先程は私もキツく言い過ぎました。
申し訳ございません」

佐倉さんにそう声をかけたのは兄だ。
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