彼が嘘をついた

「…どういたしまして！
遥みたいに料理は得意じゃないから、あんなのしか作れなくて…。
でも、あんなに大勢で食べるとは思わなかったから、量だけは足りたみたいで良かった…」
美鈴先輩が言えば、

「うん。
まさか佐久間部長と一緒になるとは…。
それに、真由子ちゃんも自分で何か持って来てると思ってた…」
楓恋も言う。

「…それに関しては、悪いな西崎。
俺もまさか、真由子が佐倉を連れて一緒にお昼を食べに来るなんて思わなかったから…」
隼人くんが申し訳なさそうに言う。

「あっ、ごめん！五十嵐くんのせいじゃないから気にしないで！」

「あぁ、分かってる！」

「……………」

「……………」

それからしばらく無言。
そのまま駅に着いた。

「じゃあな隼人。懇親会でな」

「あぁ、またな」

「遥、また来週ね。
楓恋も気をつけて帰ってね」

「美鈴先輩も気をつけてください」

「お疲れ様でした」

みんなと挨拶をすると、私と隼人くんは2人きりになる。
マンションに着くまでお互い無言だったけど、ずっと手は繋いだままで…
それをすごく嬉しく思った。

「…悪いけど、懇親会の顔出しただけ付き合って。本当に、すぐに帰るから。
帰り、2人で食べて来よう。何食べたいか、考えておいて」