彼が嘘をついた
部屋の前で言われて、「うん」と頷いた。

部屋に入るとお弁当箱を流しに冷やして、やかんにお湯を沸かすとミルクティーを作った。
そして、1口飲んで気持ちを落ち着かせる。

すると、隼人くんから連絡が来た。懇親会の場所と時間が決まったみたいで、30分後に出ることになった。

隼人くんは、約束通りに迎えに来てくれて、一緒に懇親会の場所に向かった。…けれど、不安はある。
(私が一緒でいいのかな?)って不安が…。

隣を歩きながら、そんな私の不安を消すように、隼人くんが繋いだ手を強く握ってくれる。
その上、
「大丈夫だから。
ちゃんと隣にいるから」
と言って、私の気持ちに寄り添ってくれる。
彼の、その優しさが嬉しい。

懇親会の会場は、チェーン店の居酒屋。
貸し切りになっていた。

「いらっしゃいませ」
大きな声で出迎えられて驚いてしまう。

手を繋いだまま店内に入ると、すでに懇親会は始まっていて、隼人くんに気付いた村井さんが来てくれた。

「五十嵐、佐久間さん、こっちだよ。
何飲む?ビールでいいか?」

「村井さん、すいません。俺たち、すぐに帰るので…」

隼人くんの声は村井さんに届かず、彼の手にはグラスが持たされ、ビールが注がれる。
私には、先に来ていたヒロくんが、ウーロン茶を渡してくれた。
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