彼が嘘をついた
髪全体にカラーをつけ終わると、
「馴染むまで20分くらい待っててね」

そう言って和馬さんは、床に落ちてる私の髪や、作業台の上を片付けはじめた。
それが終わると、
「ちょっと裏に行ってくるから」
そう言って事務所へと入って行った。

しばらくして事務所から出てくると、ティーカップが2つと、クッキーが入ったお皿を載せたトレイを持っていた。

「もうちょっとかかるから、ティータイムにしよう」
和馬さんは私にティーカップを渡してくれた。

「はい、ありがとうございます」
そう言って、温かい紅茶を飲んだ。

ティータイムが終わったら、髪を流してドライヤーをかけてもらった。
時間はもう、8時半を過ぎようとしている。

「こんな感じだけど、どうかな?」
セットして、和馬さんが鏡を見せてくれる。

全体的に、深みのあるブラウンに染まったセミロングの髪。
1時間半前の、真っ黒のロングヘアーの私とは、全然違う。

「はい、大丈夫です。
こんな遅い時間まで、ありがとうございました」

「そっか、良かった。
遥ちゃんの艶のあるキレイな黒髪、こんなに切っちゃったし、染めちゃったけど…。
この髪色と長さも似合うね。
…きっと、遥ちゃんだから似合うんだろうけど」

「…いえ、そんな…」
和馬さんの誉め言葉に照れてしまう。
< 15 / 198 >

この作品をシェア

pagetop