彼が嘘をついた
1度シャワーを浴び、髪と身体を洗い流してから浴槽に浸る。
ゆっくりお風呂に入っていると、身体の中から暖かくなってくるのが分かる。
気持ちいいけど、あんまり長く入っているとのぼせてしまいそうなので、ある程度で上がることにした。

用意してもらったタオルで体を拭き、用意してもらったスエットに着替えた。
彼のものらしいスエットはブカブカだ。

タオルで濡れた髪を拭きながらリビングに顔を出すと、彼がまた待ち構えたように、
「やっぱり…。
ちゃんと髪を乾かさないとダメだよ!
ここに座って」
テーブルの前に座らせられる。
そして、その後ろに隼人くんが私を包み込むように座り、ドライヤーで私の髪を乾かし始める。

「大樹から、連絡があったんだ。
…ちょっと、お兄さんと揉めたみたいだって」

隼人くんの言葉に頷いた。

「でもな…。
だからって、こんな雨の中、歩いて帰ってくることはないだろう?
連絡さえくれれば、いつでも、どこまででも、ちゃんと迎えに行くから。次からはそうしてくれ。
……お前が俺の部屋に来るまで、すげえ心配だったんだから…」

本当に心配そうに話す彼に、胸が痛くなる。

(ヤダな。
私、何してんだろう…?
こんなに想ってくれている人がいるのに、お見合いするなんて…)

当日、しっかりお断りしようと決心した。

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