彼が嘘をついた
「もう遅いから送って行くよ。
悪いけど靴を持って、一緒に事務所の方から出てもらえる?」

「はい、分かりました」

会計をして、和馬さんと一緒に裏から出た。
そして、和馬さんの車でマンションまで送ってもらう。
車の中での会話は、私の突然のイメチェンと兄のこと。

「…でもさ、本当にいきなりだよね。遥ちゃんがそんなに髪を切るなんて」

「…そうですか?
カットモデルのとき、ショートにもされましたけど?」

「…あれは、俺が強引にショートのしたの!
"練習させて"って、遥ちゃんに頼んで。
でも今回は、遥ちゃんからカットとカラーの依頼だから、ホントに驚いたよ」

「…すみません。
もうすぐ夏だし、ちょっと冒険してみました」

「うん。
さっきも言ったけど、似合うからいいよ。
晃も、来週は夏前の査定で本社に来るんだろう?
遥ちゃん見て、ビックリするだろうね」

「あー、そうですかね」

「晃も、元気なんだろう?前は本社に来ると、予定合わせて飲みに行ったのに、結婚してからは、すぐに奥さんの待つ那須に帰るから。
幸せそうで、うらやましいよ」

「そうなんですね。
和馬さんは、結婚の予定はないんですか?」

「彼女もいないのに、結婚の予定なんかないよ」

「えっ…?
そうなんですか?
何か…、…すみません」

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