彼が嘘をついた
「それもそうだな」

「遥の方が、髪型をセットしたり、メイクをしたり、服を選んだり…大変だろう?」

「まぁ、そうかな。
服は、俺の母親が一緒に選んだ。
髪とメイクは、晃くんが和馬さんに頼んでる。
俺は…和馬さんのところまで送って、綺麗に変身した遥を1番最初に見て、見合い会場のスターホテルまで連れていくだけ。
まぁ、役得って言えば役得だよな!」

言い方がちょっとムカツクけど気にしない!

「俺のお姫様を迎えに行くまで時間あるのか?
コーヒーでも飲むか?」
イヤミ混じりに聞いた。

「サンキュ!
せっかくだから、コーヒー頂くよ」

2人分のコーヒーを注いで大樹に渡す。

「…隣は、何をしているのかな?」

「さぁ…?
遥のことだから、きっちり掃除でもしているだろう」

普通に、彼女のことならなんでも分かるような口ぶりが、やっぱり憎らしい。
その気持ちを隠すようにコーヒーに口をつける。

「…大丈夫だ。
そのうち、俺なんかよりも隼人の方が遥のことを分かるようになるから」
大樹には、俺の気持ちもお見通しだ。

「あぁ。
早くそうなるといいけどな」
俺は本心で答えた。

大樹はコーヒーを飲み干すと、
「そろそろお前のお姫様を、変身させてくるわ。
楽しみに待ってろ!」
そう言って、隣の部屋へと行った。
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