彼が嘘をついた
「遥、大丈夫か?
疲れただろう、すぐにマンションまで送るからな」
車に乗ると、ヒロくんはそう言いながらエンジンをかける。

「…うん。
でも、疲れたと言うよりは、ビックリした。
なんかまだ、パニック状態だよ」

「そっか。
帰ったらゆっくり休め」

「うん」

「頭の中を整理するには、声に出すのがいいんだって。
あとは誰かに話してもいいし、独り言を言いながら自分でまとめるのもいいんじゃない?」

「…そうなんだ。
落ち着いたら、やってみようかな?」

私はそう言って笑った。

そうしているうちに、マンションに着いた。
マンションの前には、見慣れた姿が…。
あれは美鈴先輩だよね?
私、このマンションを教えていないのに、どうして?
先輩の知り合いでも住んでいるのかな?

「遥、おかえり。
二宮くん、運転お疲れ様です」

「坂本さん、こんにちは。もしかして、遥を待っていたんですか?」

「そうなのよ、よく分かったわね。
晃から"遥の話し相手になってやってくれ"って言われて来たのよ。
今、楓恋と陽菜がすき焼きの買い出しに行っているの。今夜は女子会だから、二宮くんも帰って大丈夫だよ」

「分かりました!
…じゃあ遥のこと、よろしくお願いします」

「了解、任せて!
でもまぁ、本当に晃も二宮くんも、遥に対して過保護だよね」


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