彼が嘘をついた
コーヒーを一口飲んで気持ちを落ち着かせた。
（よしっ！ちゃんと伝えよう）
そう思い、話し出そうとした時、

「あのさ…。遥の話しの前に、私の話しを聞いてもらってもいいかな？」
そう言ったのは、美鈴先輩だった。

少し戸惑ったけど、
「私はいいですけど…」
私がそう答えると、楓恋と陽菜ちゃんも頷いた。

それを確認した先輩は、ゆっくり話し出した。

「あまり面白くないかも知れないけど、昨年終わった私の恋バナね」

私たちは、先輩の話しに耳を傾けた。





☆　★　☆　★　☆　★

「私と彼は、同期入社だったの。
同じ本社勤務で、一緒に仕事をしたり、ご飯に行ったりするうちにお互い意識するようになって、付き合い始めたの。
でも、彼に言われて私たちの交際は秘密だった。それでも私は良かった。一緒にいられるだけで幸せだったから。
私たちの交際は、昨年の春まで続いた。
終止符は彼の方から。
"見合いをすることになった。会社のためにその相手と結婚する。だから、別れて欲しい"。そう言われたの」

「……………」

「私もこの会社が好きだし、そう言われたら仕方ないって思って、頷いたの。
彼が幸せなら、いいと思えたのよ。
そうして彼は、昨年秋にそのお見合い相手と結婚したの…」

（…ちょっと待って！
これって…）



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