彼が嘘をついた
「まぁ、私のことはいいのよ。
あのね。"本社内に、社長の親族がいる"って噂になったじゃない？…彼の妹がいるのよ。
で、彼は妹のことを心配しているの。
"妹には、俺みたいに会社のためのお見合い結婚はしてほしくない。ちゃんと恋愛(ｺｲ)をして、本当に好きな人と結婚してほしい"。
そう思っているの」

「……………」

「…なんかね。あんまり妹を大切にするから、その妹に対して嫉妬しちゃうのよ。
どうしたらいい？
なーんてね。まぁその妹も、すっごくかわいいんだけどね」

そう言って微笑む先輩。
私は話を聞いているだけで、涙が溢れてくる。
楓恋と陽菜ちゃんにも、目元を押さえる仕種が見える。

「…私の叶わなかった恋バナは終わり。
落ち着いたら、遥の話を聞かせてね」

先輩が私の肩をポンと叩いた。
それで、ちょっとリラックス出来たかも。

いろいろ考えて、
「あのね…」と話し出した。




☆　★　☆　★　☆　★

「あのね…、
最初に謝っておく。ごめんなさい。
実は私、…四つ葉フーズの社長の娘なの。今まで黙っていてごめんなさい。
あと、美鈴先輩。兄が、すみませんでした！」

私は美鈴先輩に頭を下げた。

「…いいのよ遥。
私の方こそ、遥が社長令嬢だと知っていたのに、知らないフリをしてごめんね」

私は首を横に振った。
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