彼が嘘をついた
兄がバラした秘密
社員証を翳して会社に入り、更衣室で制服に着替えて総務部のオフィスに入る。

「おはようございます」と挨拶をしたが、やはりまだ誰も来ていない。

荷物をデスクにしまい、第1会議室の鍵を手に取ると、まずは給湯室に向かう。
そこで、ヤカンにお湯を沸かす。

沸くまでの間、会議室の鍵を開けて、テーブルを拭く。
そうしていると、
「遥先輩、おはようございます」
今年入社した受付担当の小泉陽菜(コイズミ ヒナ)ちゃんが来た。

「陽菜ちゃん、おはよ」

「すみません。
後は私がやります!」

「分かった、お願いね。
席にいるから、分からないことがあったらいつでも聞いてね」

私は陽菜ちゃんに台拭きを渡した。
そして、自販機でカフェラテを買ってから自分の席に戻った。
総務部には、半分くらいが出社していた。

「おはようございます」
挨拶をしてから席につく。

「おはよう」
「遥ちゃん、おはよう。
うわぁ、髪、切ったんだぁ。かわいい」
「ホントだ。髪色もいいね」
総務部の女性たちが、私の周りに集まって来る。

「イメチェンしてみました。ヘンじゃないですか?」

「うん、かわいいよ」
「遥ちゃんに似合ってる」

嘘が、本音か、そう言われた。

そうしてワイワイしていると、

「遥おはよう。ちょっといい」
真由子に呼ばれた。
隼人くんも一緒だ。
< 20 / 198 >

この作品をシェア

pagetop