彼が嘘をついた
だから私は、それが普通なのだと思っていた。

ヘルパーさんは、我が家に泊まっていた。
それも、父と同じ部屋に。
その意味に気付いたのは、5年生のとき。

それから彼女に対して嫌悪感を抱いた私は、彼女の作った料理が食べられなくなった。

一番に気付いてくれたのはヒロくんだ。
私立の小学校だったため、毎日、お弁当を持って行っていた私。
私のお弁当は、当時高校生だった兄の分と一緒に、彼女が作ってくれていた。
だけど、それを食べたくない。食べられない。
だから毎朝、通学途中のコンビニで、おにぎりやパン·ジュースを買って昼食時間に食べていた。
ある朝、その様子をヒロくんに見られたのだ。

ヒロくんに聞かれて、全てを話した。
それから小学校を卒業するまで、お弁当はヒロくんのお母さんが作ってくれて、夕食はヒロくんの家で食べた。
朝は、自分でパンを焼いて、ハムやウインナー·卵料理を作って食べていた。

そんな生活が1年以上続いて、兄が大学生·私が中学生になると、私と兄で家事を分担することになった。
そのため、ヘルパーの彼女は家に来なくなった。
私はホッとした。
彼女が居た家は、私の家であっても、私の居場所はなかったから。
家事をやりながら、特に料理に興味を持った私は、そのまま管理栄養士を目指したんだ。




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