彼が嘘をついた
その日。
美鈴先輩と、陽菜ちゃんと3人で会議で使ったカップを洗い、会議室の片付けをしていると、
「今日、ご飯に行かない?」
美鈴先輩から誘いを受けた。

私はすぐに、
「先輩、すみません。
今日は予定があるんです」と断った。

陽菜ちゃんも、
「…私も、予定があります。すみません」
と、申し訳なさそうに断っていた。

「じゃ、仕方ないわね。
まだ月曜日だし、週末にでも行こうか?」

美鈴先輩の提案に、
「はい!」
「予定、空けておきます!」
私と陽菜ちゃんは、喜んで返事をした。

片付けを終えて定時をちょっと過ぎて上がると、エントランスに隼人くん·ヒロくん·真由子がいた。

すぐに駆け寄り、
「遅くなってごめん。
でも…」
隼人くんに言いかけると、

「あぁ、大丈夫。大樹から聞いたよ。飯はまたあとで行こう」
そう言ってくれた。

私たちの会話を聞いていたヒロくんは、

「ごめんな、隼人。
遥、行くぞ!」
隼人くんにそう言いながら私の手を掴み、エントランスを出ると、会社の前に停まっていたタクシーに、
「二宮です。よろしくお願いします」
と言うなり、私を先に乗せて、隣にヒロくんも乗り込んできた。
ドアが閉まると、そのまま私たちが住むマンションまで走り出した。


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