彼が嘘をついた



父と兄の話に、頭がついて行かない。

年末には、私が社長の娘で、ヒロくんが甥だって公表されて、2ヶ月もしないうちに人事異動。
恵と部長が異動になると言うことは、今日のことが原因?

私が混乱している間にも、食事は進んで行く。

「遥ちゃん、大丈夫?
お風呂入って、サッパリしてきたら?
食器なら、私と大樹で洗っておくから」

洋子叔母さんが優しく言ってくれる。

「そうだよ、遥。
ゆっくり風呂に入ってこい」

ヒロくんも言ってくれたので、

「じゃあ、お言葉に甘えて…」

着替えを用意すると、ゆっくりとお風呂に入り、髪や身体を丁寧に洗った。
しっかりドライヤーで髪を乾かしてからリビングに行くと、そこにはヒロくん一家しかいない。

「お義兄さんと晃くんは自分の部屋にいるよ。
それぞれ、また仕事をしているみたいだ」

孝志叔父さんが教えてくれる。

「遥ちゃん、落ち着いた?
一緒にケーキを食べて、ちょっとリラックスしましょう!」

叔母さんとヒロくんが、ケーキと紅茶を運んで来てくれた。

「…ありがとうございます!いただきます!」

3人の心遣いが嬉しくて、私はフルーツタルトにフォークを入れた。

それと同時に…
私が"四つ葉フーズ"の会長の孫で、
社長の娘である『佐久間遥』だと言う事実を、改めて受け止めた。




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