彼が嘘をついた
憂鬱な同期会
その翌日と翌々日。
3日間に渡る会議は、何事もなく終わった。

そして、翌週の月曜日。
兄が言っていた人事異動が発表され、会社内には衝撃が走っていた。

大石部長は腹を括ったのか、鈴木部長と引き継ぎの日程を打ち合わせしている。
反対に恵は、
「どうして私が異動になるの?
しかも、工場なんて…」
と、文句を言っている。

その恵の代わりに庶務課に異動になる同期の楓恋からは、
『私に事務職なんて出来るかな?
でも、遥が同じ部署にいるから安心だよ。いろいろ教えてね』
と、メールが来た。

そうして7月になると、楓恋が引き継ぎに来た。
発注の仕方や、棚卸しのやり方などを簡単に教える。
そのあと、実際にパソコンを使って発注をしたりもした。

「分からないことがあったら、美鈴先輩に聞けばいいからね」
私が言えば、

「そうよ。
困ったら、何でも聞いてね。仲良くやって行きましょう!」
隣の美鈴先輩も、楓恋に微笑みかけた。

「はい、ありがとうございます」
楓恋は美鈴先輩に頭を下げたあと、

「遥もありがとう。
……それより遥。同期会、行く?」
声を潜めて楓恋が聞いてきた。

『同期会』
出来れば行きたくない、話題にもしたくない言葉だ。

だけど…

「…行かない訳には、いかないでしょう」
思っている通りに答えた。



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