彼が嘘をついた

「そうだよね。
遥が行くなら、私も行くよ。真由子ちゃんも、二宮くんも、五十嵐くんも行くんでしょう？」

楓恋も苦い顔で言う。

「そうだね。
"不参加です"とは、とても言えないもんね」
私の言葉に、楓恋は頷いた。

私たちの同期会は、毎回、恵が発起人だ。
みんなに声をかけたり、お店を押さえたりするのは、別の人だけど。

「…今回は、"自慢"じゃなくて、"愚痴"を延々と聞かされれのか…」

楓恋の言葉に、憂鬱さが増してきた。
多分、楓恋もだろう。
そんな私たちに、美鈴先輩が声をかけてくれる。

「遥、楓恋。
今日は外でランチしよう！もうすぐ陽菜もくるから、4人で行こう！」

「はい」
「はい」

私たちは答えた。
久しぶりの外ランチ。
ちょっとだけ気分が上がる。

「2人は先に行ってて。
私は陽菜を待って行くから」

美鈴先輩に頷くと、楓恋と一緒に外に出た。
向かうのは、会社から徒歩3分のカフェレストラン。
大通りから、ちょっと入った場所にあるので、わかりにくい。

「…ここだよ」
楓恋と一緒に店内に入り、
「あとから2人来ます」
と声をかけて、窓際の席に座った。

「…すごい、オシャレだね。
工場だと、あの作業服のまま、外に食べに行くなんて無理だから、いつも中で食べてたよ」
楓恋が店内を見ながら言う。