彼が嘘をついた
祖父と父は、私の入社を喜んでくれた。
同じ年に、ヒロくんの入社も決まり喜んでいる。

私もヒロくんも、お互いに『四つ葉フーズ』の試験を受けたことを知らなかったが、偶然にも2人採用になり嬉しかった。

ヒロくんは元々営業希望で、その通り営業部に配属が決まった。
私は商品開発部を希望したが、総務部部長の娘が私と同期で入社するので、その監視役として、私は総務部庶務課に配属されることになった。
総務部の大石部長の娘·大石恵(オオイシ メグミ)は、私と同じ庶務課で、受付を担当している。

大石部長は、多分だけど、親族が取締役を務めているのがおもしろくないみたいだ。
仕事中に何度か、
「だから役員を身内で固めちゃダメなんだよ!」と言っているのを聞いたことがある。

また恵本人は、
「私、総務部部長の娘だから」と言う態度で仕事をしているのが分かる。
恵は受付にいるくらいだから、そこそこ綺麗だ。社内や取引先の男性に誘われることもあるらしく、それなりにデートらしきものもしているみたいだ。だけど、
「なかなか私に釣り合う肩書きの人はいないのよねぇ」
とつぶやいている。

"私に釣り合う人"って何?
外見や肩書きで相手を選ぶのって、何か違うと思う。そんなの、"本当の愛"じゃない!
まだヒロくんしか好きになったことのない私が言うことじゃないけど。



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