彼が嘘をついた

「……………」

「…そしたらね。
隼人が大樹に"部屋を交換しよう"と言い出して、大樹も頷いてくれたの」

「……………」

「良かったね。
でも、ちょっと妬けるかな。
…だって。
大樹も隼人も、遥のことを1番に考えているんだもん」

「……………」

真由子の言葉に、私は微笑みだけを返した。

(…違うよ)と言いたかった。

(五十嵐くんは私じゃなくて真由子の幸せを考えて、ヒロくんと部屋を交換することを承諾したんだよ!)

そう教えてあげたいけど、何も言わずに唇を噛んだ。

そうしているうちに、台車に荷物を乗せて、ヒロくんと五十嵐くんが戻ってきた。
2人で下ろし始めるから、私と真由子も手伝おうとしたけど、「重いから俺
たちでやるから」と言われてしまった。

さすがに男2人だと早い。玄関の中にダンボールの山が出来る。
全てをおろし終わると、
「これで全部だから、台車を戻してくるよ」
と、ヒロくんが台車を押して行った。

時間はもうすぐ11時半。

「少し早いけど、大樹が戻ってきたらランチに行こうか?」

真由子の言葉に、私と五十嵐くんは頷いた。
そして、戻って来たヒロくんと4人でランチに出掛けた。





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