彼が嘘をついた
ドアスコープで確認すると、やはり五十嵐くんの姿があった。

「ちょっと待ってね」

そう言ってから、玄関の鍵を開けた。

「こんばんは。
お言葉に甘えてお邪魔します」

そう言いながら靴を脱ぐ彼。

「…どうぞ。
五十嵐くんの口に合うか分からないけど…」

席に案内した。

「…すげぇ!蕎麦屋みたいじゃん!
…いただきます」

まずはスプーンを持ち、茶碗蒸しを1口食べる。
そのあと、麺つゆにネギと山葵を入れ、蕎麦に手を伸ばした。

「ん、美味い!
遥も一緒に食べよう!」

私はキッチンでグラスを2つと麦茶のポットを持ってテーブルに運んだ。

「麦茶でいい?
うち、お酒は置いてないから…」

「あっ、ありがとう」

私は麦茶を注いだグラスを渡した。
そして、 自分の分も注ぐと、
「いただきます」
と手を合わせて食べ始めた。

まずは茶碗蒸し。
プルプルの食感で、ちょっと出汁が強かったけど、久しぶりに作ったわりには上手く出来ていた。
次はお蕎麦。
気持ち固めに茹でたから、コシがあって美味しい。
天麩羅も、サクッと揚がっていた。

「ごちそうさま。
全部が、すごくうまかったよ」

「お粗末でした。
そんなふうに言ってもらえて良かったです」


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